古言梯 序文

古言梯 序

いにしへにいへらく、ことだまの幸(さき)はふ國(くに)、ことだまのたすくる國と、是はしも、こと擧(あげ)すめれば、皇神(すめがみ)のさきはへまして、通(とほ)りたらはざる事なきをいふ也、故(かれ)世の中の常(つね)の言(ことば)しも、神の代の上(かみ)が上(かみ)なる言(こと)を人の代の末(すゑ)とも末(すゑ)々まで傳(つた)へいふに、ちゞのものもわかれ萬(よろづ)のことわりもたらひて、あやしくたへなるはこの言魂(ことだま)の幸(さち)になも有ける、しかあれば末の代の人といへども、ふるきことばをよくしりそのもとをふかくわきまへ得(う)る時は、目(め)は見放(みさけ)ねどこし方行末の事をしり、あしはゆかねどあめつちの道になもとほれりける、そもゝゝ此ことばのおやちふものをたづぬれば、あ い う え を の五十連(いつら)のこゑになも有、これぞこの天地(あめつち)のひらけはしまりにける時、たまちはふ皇(すめ)神のみことの御口(おくち)よりのたまひはじめしを、あめのます人゛高山のたかゞゝに傳へ、わたの浪のしきゝゝにとなへ來れるもの也ける、此五十連(いつら)のこゑを、いにしへのふみにむかへ考るに、たてぬきにことの通ひ、本末にこゑのひゞくものは更にもいはず、いゐ えゑ をお のたぐひ、そのこゑ相似て意(こゝろ)のことなるわかちかりにもたがふことあらざりき、さるを世のくだり行まにゝゝ、人の心さかしらになり行て、他の國なる文字ちふものをかりたり、しかはあれどこゝにしてはたゞにことばを傳ふるかりの目(ま)じるしとのみしたりしを、かくてゆ後(のち)の世の人はかの文字につき、その意によるをわざのごとおぼえて、いにしへの言魂貴(たふと)き事をばやゝ ゝゝわすれ行、ふるの中道ふるきことばはおほどれるものにかくろへつゝ、其もとはしもとめわきまへがたくなもなりにたり、こゝに楫取の魚彦は、賀茂のうしにつきて、おのれ宇萬伎とゝもに上つ代の事をまなべるに、此をぢいにしへをたふとむこゝろまめにして、後の世(よ)に古(いにし)の言(こと)をうしなへるをうれへ、古(いにしへ)のふみをひろく考へふかくわきまへて、たがへるをたゞし、のこれるを擧(あげ)、さはなる年月(としつき)を經(へ)つゝ、書(かき)つめにたるを更うしにもとひ、友にもはかりて、遂(つひ)にひとまきとなもなしたりける、まことにつとめたるいさしさはなるかも、世の中にいにしへをしぬべる人こをねづきとせば、ことだまのさちはひたすけて、いにしへの道の五百隈(いほくま)や、八百隈(やほくま)までをも、思たらはざらめや、あきらめざらめや、

註(序3オ)
いさをしとのみいふへ――いさほしといふはわろし

参考資料

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