正字正かな参考書

公開 : 2006/03/26 ; 追記 : 2009/01/12 © 平頭通

正字正かなを之から勉強してみたいと云ふ人向けに、参考となる書籍を御紹介します。現在、比較的に入手し易いものに厳選してみました。以下の参考書が揃つてゐれば、正字や正かなの表記で迷つた時でも大概の事は解決します。

『私の國語教室』

「当用漢字」や「現代かなづかい」に対する批判の書です。現在の日本語表記が如何にして作られたのかを知る事が出来ます。正仮名遣を修得したい人向けには、第三章「歴史的かなづかひ修得法」と、第四章「國語音韻の變化」と、第五章「國語音韻の特質」とを重点的に読まれる事をお薦めします。特に、古来仮名遣として問題とされて来た「ハ行転呼音」や「いゐ」「えゑ」「おを」の書分けや、「じぢ」「ずづ」の四つ仮名の書分け等について、語例を引いて叮嚀に解説してゐますので、正かなを勉強したい人には必読です。

又、「当用漢字」や「現代かなづかい」についての激しい批判を展開してゐますので、現在普通に行はれてゐる「常用漢字」「現代仮名遣い」に疑問を抱いてゐる人は、全編を通して通読されたはうが良いでせう。文章の表記は、正字正かなを採用してゐますから、此の書を読み終へた頃には、正字正かなの文章が普通に読めるやうになつてゐる事請合ひです。

『旧字力、旧仮名力』

「旧字」や「旧仮名」と表現はしてゐますが、正字正かなに肯定的な内容の書物です。構成としては、漢字について先に解説され、続いて、仮名遣についての解説があります。共に教科書としての使用にも耐へられる程に解り易い内容となつてをり、正字正かな初心者にとつては、袖珍必携の書として活用して頂きたいぐらゐの本です。

漢字の字体については、106頁の辺りに「新旧字体対照表」が示されてゐますから、正字が判らない時も直ぐに調べる事が出来ます。又、『私の國語教室』では必然的に言及できなかつた、「人名用漢字」や「拡張新字体」に対する意見も掲載されてあります。各種の語例では、正字体の漢字が之でもかと云ふぐらゐに大きく印刷されてゐますから、各文字の細部まで確りと目で見て確認する事が出来ます。唯、「バランスが悪い字体」など、筆者の主観に基づく判断があるのが少し気に障るかも知れません。

仮名遣については、先づ、文章を書いた時に必然的に表面に表れる助詞や助動詞や活用語尾の仮名遣の説明から這入り、其処から動詞の語幹の仮名遣や、名詞の仮名遣へと移行し、最終的に字音仮名遣の解説へと移るやうに構成されてあります。実は、私も此のサイトで同じ構成によつて仮名遣の解説をやらうと思つてゐたのですが、先にやられてしまひました。

『日本文法 口語篇』

日本語の文法を解説してゐる書物です。世に言ふ「時枝文法」とは之の事です。明治以前からの伝統的な国語文法解釈を取入れ、「詞」と「辞」を中心に日本語の文法を構築してゐます。又、橋本文法や学校文法で採用されてゐる「形容動詞」を否定し其の理由も解説されてゐます。日本語の書き言葉を「語」と「文」と「文章」との三つに分けて論じてゐるのも、此の文法の特徴です。全て正字正かな表記で書かれてゐますので、正字正かなと「時枝文法」の親和性を垣間見る事が出来ると思ひます。

正字正かなを国語文法の方面から勉強したい人にはお薦めの参考書です。姉妹版の『日本文法 文語篇』もお薦めです。

『学校では教えてくれない 日本語の秘密』

「常用漢字」や「現代仮名遣い」に疑問を抱いてゐる人にお薦めの書籍です。表音主義者の妥協の産物としての現在の日本語の表記がどのやうな経緯で出来上がつたのかが、理解できると思ひます。「現代仮名遣い」に最初の切込みを入れるとすれば、先づは、「じぢ」「ずづ」の四つ仮名の区別からと思つてゐたのですが、其れを実践してゐるのが此の書物の特徴です。

此の本で特に注目したいのは、第十章「国語再生の鍵を求めて」です。「読み書き分離学習」と「漢字の体系的学習」について述べられてをります。現在の国語教育に対する批判を新たな学習方法の提示で以て行つてゐますが、私も漢字の読みを先に憶える学習方法や、漢字を部首や偏旁などによつて系統立てて憶える学習方法については、賛成する処です。兎に角、色々と発見の多い書物です。

此の本での難を一つ挙げるとすれば、全編に亘つて批判対象の「常用漢字」「現代仮名遣い」で表記してゐる点でせうか。此処まで書くのならば、福田恆存のやうに正字正かなで書いて貰ひたかつたものです。此の本を読めば「常用漢字」や「現代仮名遣い」の不条理性を再確認できます。

『言海』文庫版

大槻文彦と云ふ人が一世一代で作り上げた国語辞書です。見出し語は全て正かな表記で、五十音順に排列されてあります。現代語の辞書としては必ずしも実用的ではありませんが、筆者独特の各語の解説は見てゐる丈で楽しめます。『言海』で参照すべきは、最初のはうに掲載されてある「語法指南」です。西洋の文法論を参考に、日本語の文法が如何なるものかを解り易く解説してあります。以前は此の部分が国語の授業に利用された事もあつたさうです。

現在は、『大言海』と呼ばれる大型の辞書が在りますが、見出し語は「現代仮名遣い」に書換へられてゐますし、内容も大幅に変へられてしまつた為、全く別物になつてしまひました。

『新旧かなづかい便覧』

「現代仮名遣い」、正仮名遣、漢字表記の三項目で、一覧表を構成したやうな書物になつてゐます。漢字表記は、「新字体」で書かれてあり、「同音の漢字による書きかえ」に対応されてゐない為、あまり参考にはなりませんが、仮名遣については必要以上の参考になるので、大いに活用したい便覧です。

附録の「歴史的仮名遣い概説」は日本語の音韻変化と仮名遣の関係を概略で解説してありますので、一読をお薦めしておきます。

かうかん
(正) 交感・向寒・好感・好漢・巷間・校勘・浩瀚
かうくわん
(誤) 交換・高官・鋼管
(正) 交換・高官・鋼管・交歓・交款・交驩
こうくわん
(誤) 公館・交歓・交款・交驩・後患
(正) 公館・後患

其の他

等……

参考書は、飽く迄も参考の為に用をなす事を目的とします。実際に正字正かなで書かれた文章を読んだり、現実に正字正かなで文章を書いたり、兎に角、生の正字正かなに触れるやうな心掛けが必要なのだと思ひます。

関聯頁

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