假名遣改定案について(その三)

五 字音の表記に關する通則

字音の表記に關する通則も、大体において國語の表記に關するものと同樣ではあるが、兩者の間に幾分かの出入もあるから、全文を次にかゝげる。

第一條
字音の拗音を書くには や、ゆ、よ を右側下に細書する。
たゞし特別の場合にかぎり細書せずとも差支ない。
第二條
字音の促音を書くには つ を右側下に細書する。
たゞし特別の場合にかぎり細書せずとも差支ない。
第三條
字音の ウ 列長音は ウ 列の假名に う をつけて書く。
第四條
字音の オ 列長音は オ 列の假名に う をつけて書く。
第五條
字音の ウ 列拗音の長音は ウ 列拗音の假名に う をつけて書く。
第六條
字音の オ 列拗音の長音は オ 列拗音の假名に う をつけて書く。
第七條
左の如き語は發音のまゝに書く。

右のうちで特に注意すべきものは第七條の規定である。「銀杏」「天皇」はまさしく「ぎんなん」「てんのう」と發音されるのに、「杏」の音が「あん」「皇」の音が「おう」(從來の字音假名遣にしたがえば「わう」)であるからといふので、これを「ぎんあん」「てんおう」と書くが如きは不合理でもあり無意味でもある。これらは、よろしく發音のまゝに「ぎんなん」「てんのう」の如く書くのがよい。本條の精神はそこにあるのである。

六 字音假名遣改定案

字音假名遣改定案の本文は左の如くである。

第一

ゐ、ゑ、を は い、え、お に改める。

一 ゐ を い に改めるもの
胃 威 位 遺 委 尉
域 員 院 韻
水 炊 衰 推 對 遺 類
二 ゑ を え に改めるもの
會 惠 囘 衞
越 猿 園 圓 苑 援 寃
三 を を お に改めるもの
汚 惡 嗚
屋 温 穩 園 遠 怨

第二

くゎ、ぐゎ は か、が に改める。

一 くゎ を か に改めるもの
化 貨 果 菓 過 科 火 課
會 悔 壞 囘 怪 快 獲 擴
活 滑 歡 官 還 貫
二 ぐゎ を が に改めるもの
臥 瓦
外 月 元 丸 願

第三

ぢ、づ は じ、ず に改める。

一 ぢ を じ に改めるもの
持 痔
軸 舳 陣
女 序 重 住 頭
二 づ を ず に改めるもの
豆 頭 途 圖

第四

わ に發音される は は わ に改める。

第五

ユの長音に發音される いう、いふ は ゆう に改める。

一 いう を ゆう に改めるもの
尤 又 友 幽 郵 誘 由 有 遊 悠 憂 猶
二 いふ を ゆう に改めるもの
邑 揖

第六

オ列長音に發音される あう、わう、あふ、おふ は おう に改める。

一 あう を おう に改めるもの
鶯 櫻 鸚 央 奧
二 わう を おう に改めるもの
往 王 旺 皇 凰
三 あふ を おう に改めるもの
凹 押 鴨
四 おふ を おう に改めるもの

第七

オ列長音に發音される かう、くゎう、かふ、こふ は こう に、 がう、ぐゎう、がふ、ごふ は ごう に改める。

一 かう を こう に改めるもの
好 考 向 肴 香 講 高 慷 航 幸 効 江 降 校 行
二 くゎう を こう に改めるもの
宏 紘 光 廣 皇 惶 荒
三 かふ を こう に改めるもの
甲 岬 閤
四 こふ を こう に改めるもの
五 がう を ごう に改めるもの
強 豪 傲
六 ぐゎう を ごう に改めるもの
七 がふ を ごう に改めるもの
八 ごふ を ごう に改めるもの
劫 業

第八

オ列長音に發音される さう、さふ は そう に、 ざう、ざふ は ぞう に改める。

一 さう を そう に改めるもの
掃 双 爪 早 相 倉 曹 壯 操 騷 爭 桑 喪 葬
二 さふ を そう に改めるもの
三 ざう を ぞう に改めるもの
造 藏 象 像
四 ざふ を ぞう に改めるもの

第九

オ列長音に發音される たう、たふ は とう に、 だう、だふ は どう に改める。

一 たう を とう に改めるもの
刀 島 討 盜 打 橙 糖 當 湯 桃 陶 稻
二 たふ を とう に改めるもの
答 塔 踏 納
三 だう を どう に改めるもの
道 堂 棠 萄
四 だふ を どう に改めるもの

第十

オ列長音に發音される なう、なふ は のう に改める。

一 なう を のう に改めるもの
腦 嚢
二 なふ を のう に改めるもの

第十一

オ列長音に發音される はう、はふ、ほふ は ほう に、 ばう、ばふ、ぼふ は ぼう に改める。

一 はう を ほう に改めるもの
報 邦 宝 方 包 保 褒
たゞし蘇枋の枋は發音に從い はう を おう に改める。
二 はふ 又は ほふ を ほう に改めるもの
三 ばう を ぼう に改めるもの
暴 冒 坊 房 亡 望 膨
四 ばふ 又は ぼふ を ぼう に改めるもの

第十二

オ列長音に發音される まう は もう に改める。

第十三

オ列長音に發音される やう、えう、えふ は よう に改める。

一 やう を よう に改めるもの
羊 洋 樣 陽 楊
二 えう を よう に改めるもの
要 曜 遙 謠 夭 幼 杳
三 えふ を よう に改めるもの

第十四

オ列長音に發音される らう、らふ は ろう に改める。

一 らう を ろう に改めるもの
老 勞
二 らふ を ろう に改めるもの

参考資料

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