松前島郷帳(大日本地名辞書続篇に掲載の分)
久留味世島クルミセ(三四四頁)
クルミセ島の方
- イルル(水晶列島の勇留なるべし)
- ツモシリ(今、根室花咲郡の近岸に友知島あれど、それにはあらじ)?
- キイタツフ(今、根室の東に濱中村霧多布あれど、それには非じ)?
- モシリカ(不詳)?
- クナシリ(今國後郡の本島なり)
- モウシヤ(不詳)?
- ハルタマコタン(ハルンマにて、今、占守郡の加林古丹歟)
- マカンルル(今、得撫郡の武魯屯の舊名なり)
- オヤコバ(今、占守郡の阿頼度なり)
- シヤムラテフ(蝦夷志シヤムウテツ、不詳)?
- ラセウワ(今、新知郡羅處和なり)
- シリンキ(今、占守郡志林規なり)
- アトエフ(不詳)?
- クルミセ(今、露西亞領の勘察加の地を指して一島とす)
- エカリマ(今、占守郡越渇麻なり)
- ウルフ(今、得撫郡得生なり)
- エトロホ(今、江捉四郡に分つ)
- ホンシリオオイ(今、得撫郡知理保以の北島なり)
- シイアシコタン(今、占守郡舍子古丹なり)
- エバイト(今、占守郡牟志利なり)
- モトワ(今、新知郡松輪なり)
- ケトナイ(蝦夷志ケウトナイ、恐らくはケトウイにて、今、新知郡計吐夷也)
- モシヤ(不詳、ヌシヤの誤寫歟、占守郡温禰をいふ)
- シイモシ(今、占守郡占守の本島なり)
- ラツコアキ(今、新知郡雷公計なり)
- ウセシリ(今、新知郡牛知なり)
- レニンゲチヤ(不詳)?
- フカンルルアシ(蝦夷志ツカンルルアシ、不詳)?
- マサオチ(今、占守郡知林古丹なり)
- シイモシリ(今、新知郡霜知なり)
- ヱカルマシ(蝦夷志ヱアルマシ、不詳)?
- マカンナ(不詳)?
- シリオオイ(今得撫郡知理保伊の南島なり)
- コクメツラ(今、占守郡麻勘留の舊名也)
以上三十四島、その記載は、位置の順次に因らず、故に、後世までその名を 易へざるものは之を知るべしと雖、沿革する者は之を辨別する能はず。今、一々注釋し、未知凡十島。按、蝦夷志「東北諸夷三十七島」(采覽異言、又三十七島とす)といひながら、其島名は郷帳に合ひ、三十四のみ、誤脱あるを知る。
今、國後江捉の一列の諸島にして、郷帳を合はざる者、大小五つ六つもあり、
- 摺戸島(新知郡牛知に竝ぶ、スレドネハといふ)、
- 牟志利四島(郷帳にヱバイトといひ一島と爲す)、
- 温禰古丹島(占守郡の大島)、
- ハイノコ島(占守郡麻勘留の屬嶼)、
- 幌筵島(占守郡の最大島)、
- 鳥島(占守本島の屬)、
唐人島カラト(四〇二頁)
からと島
- うつしやむ(今、邦領白主の地なり)
- こくわ
- つなよろ(ナヨロ歟、今、邦領に名寄二所あり)
- まをか(今、邦領にて眞岡といふ)
- のたしやむ(今、邦領にて野田寒といふ)
- おつちし(今、露領の亞歴山徳の地なり)
- きどうし(今、露領にて木透是なり)
- いといまて(露領衣堆(エトイ)に合せ看よ)
- おれかた(今、邦領多來加の奧のオロツコ部なり)
- ちやほこ(今、露領東岸のチヤモキ歟)
- なふきん
- にくぶん(今、邦領多來加の奧にやあらん)
- きんちば
- びんのき
- うへこたん(今、邦領遠古丹(ウヱンコタン)なるべし)
- かれたん
- せうや(今、邦領に宋也、二所あり)
- しろいところ(今、邦領知床二所あり)
- しいた
- ないふつ(今、邦領内沸是なり)
- あゆる(今、邦領東屯内の地なり)
蝦夷志に、二十二部落といひ、郷帳と同く二十一名を録す、但、第二ツナヨロ、第三コクワと次第するを異とす。(郷帳と同時に獻進せられし島圖には、カラトを明白に北方の大島とす)
出典
- 底本
- 『大日本地名辞書続篇』明治42年、吉田東伍著、冨山房(NDLデジコレ: 大日本地名辞書 続編、215コマ、244コマ)
- 参照
- 『蝦夷志』源君美著(古典籍DB: 蝦夷志 / 源君美 [著])
脚註
- カタカナ、ひらがなの別や、濁点、半濁点の別に附いては、当該辞書の表記のまゝとする。
- 順番の番号表記に附いては、当該辞書には表記は無いが、当方の判断で便宜として番号を割振つておいた。
- 各地名に付与された括弧内の文言は、当該辞書に依る註釈を其のまゝ掲載した。
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