「サロメ」の場合

今囘は外國文學です

お前の眼は、さつきはあんなにも恐しく、怒りと蔑みにみちてゐたのに、今はじつと閉ぢてゐる。どうして閉ぢてゐるのだい? その眼をおあけ! 目蓋を開いておくれ、ヨカナーン。

オスカー・ワイルド著、福田恆存譯の戲曲です。悲劇に類別されるやうです。内容を見れば判ると思ひますが、新約聖書のマタイ傳14章邊りのバプテスマのヨハネの死の場面に非常に類似してゐます。

其れでは例によつて。「さつき」の中央の「つ」は、促音の表記です。ですので、發音する時は、マッチとかチッキとかと同樣に音が詰るやうに發音します。又、「じつと」の「つ」も同じく促音の表記になります。通常正字正かなの文章では小さい「つ」は使用しません。

「閉ぢて」に就いては、「じ」を遣はずに、「ぢ」を遣ひます。此の動詞は、ダ行上一段活用ですから、閉ぢない・閉ぢます・閉ぢる・閉ぢれば、と活用します。此の手の動詞は少いので直ぐ憶えられると思ひます。

「ゐる」や「ゐた」は、正字正かなの文章では、ハ行四段活用動詞の次ぐらゐに多用される動詞です。ワ行上一段動詞で、ゐない・ゐます・ゐる・ゐれば、と活用します。漢字で書けば「居る」ですが、正字正かなの文章では敢へてひらがなの「ゐる」を遣ひます。

「開いて」の場合は、「開きて」の「き」がイ音便に變化したものですから、表記も變化に合せて「い」を遣ひます。「開ゐて」とか書くのは控へませう

以下は參考程度。
お前の假名遣は「おまへ」
眼の讀みは「まなこ」
「どう」は「だう」とは書かない


驪前頁戀先頭頁黎次頁
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